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© 住宅での受動喫煙被害を考える会・兵庫

住宅におけるタバコ問題と規制【アメリカ】

アメリカでは、世界に先駆けてさまざまなタバコ規制が実施されてきました。
しかし、住宅での受動喫煙に関しての規制は州や自治体によってまちまちです。
今回は、アメリカの住宅の事例をご紹介します。

アメリカの住宅事情

アメリカでは、一戸建て住宅を購入できない低所得者層が、集合住宅を廉価で賃貸している傾向があります。
日本と比べ、一戸建て住宅の敷地面積が広く、一戸建てでの受動喫煙の被害といえば家庭内喫煙が代表的で、家族のほか、介護者やベビーシッターの喫煙が問題になっています。
アメリカの場合、近隣からの受動喫煙が問題となるのは、圧倒的に集合住宅の居住者が多数のようです。

住宅での喫煙規制が最も進んでいるのはカリフォルニア州で、集合住宅の個室での喫煙を規制する法律を制定している自治体は、すべてカリフォルニア州にあります。*1
なかでも、サンラフェル市は2013年施行の条例で、いかなる形態の集合住宅においても、他人の部屋と壁を共有している住居での喫煙を禁止しています。サンラフェル市の条例制定の際には、西部貧困センターから「低所得者層に対して支援のない禁煙政策は、家を立ち退けということと同じである」との批判がありました。しかし、アメリカ肺協会のキンバリー・アマジン氏は、「低所得世帯が致命的な受動喫煙から逃れられないことこそ本当の差別だ。そのような家族は、収入や健康上の理由で別の居住地を見つけることができない」と反論しています。*2

*1 U.S. Laws for Smokefree Multi-Unit Housing
*2 San Rafael Smoking Ban, Strictest In The Nation, Goes Into Effect

経済的に不利な賃貸居住者が受動喫煙の被害を受けやすい

住宅の受動喫煙対策が進んでいるカリフォルニア州ですが、貧富の差が激しい地域であることも知られています。アメリカ合衆国国勢調査局によると、カリフォルニア州の貧困率(生活コスト調整済み)は全米で最も高いそうです。

カリフォルニア州サンフランシスコの街並み

カリフォルニア公共政策研究所(PPIC)が2023年11月に行った調査では、カリフォルニア州民の約半数は、住宅費が自分や家族にとって経済的な負担になっていると答えています(「大きな負担になっている」34%、「少し負担になっている 」17%)。この傾向は人種や地域、学歴によっても差があり、それらは経済格差に直結しているものと推測されます。住宅費が大きな経済的負担になっていると回答したのは、州内の賃貸住宅居住者では51%ですが、持ち家居住者では19%にとどまり、その差は歴然としています。*3

アメリカでも、学歴や世帯年収によって喫煙率に差があることはよく知られています。*4
廉価な賃貸物件の居住者は、こうした経済格差が反映し、受動喫煙を回避しにくい住環境を選ばざるを得ないとも言えるでしょう。

*3 https://www.ppic.org/publication/ppic-statewide-survey-californians-and-their-government-december-2023/
*4 全体では13.5%…アメリカ合衆国の喫煙状況最新情報(不破雷蔵、ヤフーニュース、2024.1.14)

全米公営住宅の禁煙化

アメリカ合衆国住宅都市開発省(HUD)は、2018年7月31日から、全米の公営住宅のユニットと共用エリアにおける紙巻きタバコ、葉巻、パイプの持ち込みを禁止しました。住宅建物内は完全禁煙で、ドアから 25 フィート(7.6m)以内の屋外や付属のバルコニーやパティオも禁煙が義務づけられています。*5
アメリカ非喫煙者権利財団(ANR)は、HUDの規則実施に関する声明*6で、「この政策によって200万人の公営住宅居住者が、自宅でより快適に呼吸できるようになる」と発表しています。声明中には、公営住宅の禁煙化の必要性とともに、禁煙支援の重要性も記されています(以下引用)。

(引用開始)
One third of adults who receive HUD housing assistance smoke, which is twice the rate than the general population, and half of these smokers tried to quit. A smokefree living environment can support residents who want to quit smoking and a key part of the implementation of HUD’s rule is to connect residents with cessation resources available in their area.
(引用終了)

HUDの住宅支援を受けている成人の3分の1は喫煙しており、これは一般人口の2倍の割合で、その半数は禁煙を試みました。禁煙の生活環境は、禁煙を希望する住民を支援できます。HUDの規則の実施において重要な点は、住民を地域で利用可能な禁煙支援のリソースにつなげることです。

*5 https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2016-12-05/pdf/2016-28986.pdf
*6 https://nonsmokersrights.org/sites/default/files/2018-07/
ANR-Statement-HUD-rule-effective.pdf

住宅禁煙化の利点は事業者にも

住宅の禁煙化の利点は居住者視点で語られることが多いのですが、事業者にも多くの利益をもたらすことは、もっと知られてよいでしょう。

・喫煙する居住者の退去後の、清掃および修繕にかかる費用の削減
・次の入居までの引き渡し時間の削減
・火災による人的・物質的リスクの低減
・受動喫煙問題の消失

ミネソタ州の調査では、回答者の54%は、他の条件が同じであれば禁煙の建物を選ぶ可能性が非常に高いと回答し、34%は禁煙の建物に住むために多少の費用を支払ってもよいと回答しています。*7

*7 https://academic.oup.com/ntr/article-abstract/9/
Suppl_1/S39/1138713?redirectedFrom=fulltext

日本の公社・公営住宅を禁煙に

日本では、禁煙の集合住宅の先駆けとして、2010年に栃木県小山市に敷地内禁煙のアパートがオープンしました。*8
また、旭化成ホームズが2014年11月から、同社の賃貸物件・へーベルメゾンを禁煙マンションとして展開しており(ただし、全物件か未確認)*9、 2018年には「ペット共生・禁煙型ヘーベルメゾン」を名古屋市名東区で公開、実例見学会が開催されました。*10
東京都住宅供給公社では、受動喫煙防止の観点から、健康増進法が改正施行された年(2020年)の10月、コーシャハイム経堂フォレスト(世田谷区)で初めて一部の住棟及びその敷地を禁煙とする新築賃貸住宅を竣工し、その後、カーメスト大蔵の森(世田谷区)、カーメスト新高円寺(杉並区)、カーメスト石川台(大田区)、カーメスト桜新町(世田谷区)を展開しています。

当会では、住宅での受動喫煙問題に窓口を設け、行政が適切な介入を行える仕組みづくりを促すとともに、日本においても禁煙の集合住宅の普及や公社・公営住宅(賃貸物件)の禁煙化が進むよう、関係機関に働きかけます。

*8 2010年12月9日付東京新聞
*9 もう隣人のタバコに悩まされない!「禁煙マンション」ってどんなマンション?(小野 洋平(やじろべえ)、SUUMOジャーナル、2017.5.12)
*10 ペット共生・禁煙型ヘーベルメゾンを公開します!(へーベルプラザ名古屋ブログ、2018.11.12)

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この記事は、英語を自動翻訳した記事を参考にし、記述した部分があります。
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