受動喫煙の状況
以前から、時折タバコの臭いが部屋に漂ってくることはありましたが、いつからか、1時間半おき、頻繁な時は30分おきにタバコの臭いが漂ってくるようになりました。
窓を開けることができず、咳が出はじめ、しだいに頭痛や吐き気、鼻づまりなどの症状に見舞われるようになりました。
初動
タバコ臭に気づいてからベランダに出て周囲を見渡しても、タバコ煙の発生宅を見つけることはできませんでした。
管理組合に相談
家族と相談し、管理組合に文書で対策を依頼しました。回答が届いたのは9か月後でした。対策として
- ベランダでの喫煙は自粛、または近隣へ配慮をするよう注意喚起のチラシを掲出
- タバコ煙の発生宅に理事会で訪問し、喫煙の自粛をお願いする。ただし、喫煙している住居の特定は相談者が行う
- ベランダでの喫煙を全面的に禁止とする議案を総会にかける
の3つの案が提示されました。その時、理事長からの電話で、被害に遭っているのは私の家だけではないこともわかりました。
チラシ掲出に効果なし
まずはチラシ掲出の効果を見極めることにしましたが、効果は感じられませんでした。
咳が出続けるようになり、病院で咳喘息と診断され、タバコ臭が漂ってくることに恐怖を感じ、精神的にも疲弊していきました。
記録の採取と診断書の取得
このままでは日常生活が危うくなると感じ、受動喫煙の記録をとりました。
受動喫煙症の診断可能な病院を受診し、診断書を発行してもらいました。
弁護士に相談
弁護士に相談したところ、タバコ煙の発生宅の特定に、住宅の管理人の協力を得るよう助言されました。
管理会社の協力
管理人に協力を依頼後、すぐに管理会社の担当者から電話があり、特定を引き受けてくれました。
担当者が私の自宅がある棟の全戸に電話で確認したところ、喫煙している家は1戸で、タバコを吸う人は1人しかいないことがわかりました。
この時電話に出た家族に、「近隣で受動喫煙による健康被害が出ています。ベランダでの喫煙やタバコの臭いが漏れるような喫煙は控えていただくよう、タバコを吸っているご本人に伝えてください」と、担当者から話してくれたそうです。
繰り返される喫煙
管理会社からの忠告の効果か、タバコの臭いはピタリとやみました。しかし、安堵したのも束の間、半年後には再びタバコの臭いが漂ってくるようになりました。
チラシの全戸配布
住宅の管理規約と使用細則を調べ、文書に診断書を添付して、管理組合に対して
- ベランダは専有使用権が認められているものの好きに使えるわけではなく、ベランダでの喫煙は管理規約・使用細則に反する行為であること
- 受動喫煙による健康被害で受動喫煙症と診断されたこと
- ベランダでの喫煙に対し、2012年12月13日に名古屋地方裁判所で損害賠償命令が出された判決が確定したこと
を踏まえ、チラシ掲出のみでは効果を期待できないことから、チラシの全戸配布をお願いしました。
2週間後、住宅居住者に向けて、ベランダでの喫煙をやめるよう求めたチラシが全戸配布され、掲示板に掲出されました。
結末
タバコ煙の発生宅が当事者性を認識した後でのチラシの全戸配布は、大きな効果がありました。
ただし、被害が完全になくなったわけではありません。
ごく稀にタバコの臭いが漂ってくるので、ベランダに出て「タバコの臭いがします」というと当分の間止まる、ということを繰り返しながら現在に至っています。
今、振り返って…
タバコ煙の発生宅を特定することが大変難しく、特定できたとしても直接交渉は難航すると予想し、管理組合に対策を依頼しました。
管理会社の協力でタバコ煙の発生宅を特定してから、劇的に事態が進展しました。
タバコ煙の発生宅や管理組合・管理会社の関係者とは会ったことがありません。
ほとんどのやり取りを文書で行ったため時間はかかりましたが、その間知見を得たり考えを整理したりすることができ、人間関係がこじれたと感じたこともありませんでした。
ただ、それはたまたま運がよかっただけで、関係者次第でまた別の展開になったかもしれません。
住宅での受動喫煙はもはや公害といっても過言ではなく、個人で解決するにせよ、管理組合や管理会社が対応するにせよ、負担が重く難度の高い問題だと思います。
運の良し悪しに関係なく、皆に等しく安全な住環境が保障されるよう法律が整備され、公害同様に行政による適切な介入が可能になることを切に希望します。